ギアのクリスマス2
著:ランシェオン・カルバレーナ
「・・・・と言うわけでこちらの準備は整いました。あとはそちらの到着を待つだけです。
・・・はい。そこの所は大丈夫です。ご主人様には気づかれてはいません。・・・・はい。・・・・はい。わかりました。それでは。」
そういって無線をきると、暗がりの中で彼女は唇を笑顔の形に吊り上げた。文字道理満面の笑顔を浮かべていると、後ろから声がかかった。
「ドウヤラ計画ハ順調ニ進ンデイルヨウダネ・・・・」
振り返らずとも彼女には声の主がだれかわかっていた。そのままの姿勢で彼女は今一人の協力者に答えた。
「ええ。とても順調だわMr・E。今夜は楽しくなるわよ。」
「サヨウ。二重ノ意味デ楽シイデスナ、Ms・S。」
「ご主人様の驚いた顔が目に浮かぶわ。」
しばらくの沈黙の後、二人は声を上げて笑った。
とある森の中の出来事だった。
12月25日PM5:18「悪魔の住む森」
「なんだ・・・・。これは・・・・・。」
帰ってくるなり、テスタメントは呆然と呟いた。朝食を終えた後、昼ごろまでは彼らが住み家にしている小屋にいたのだが、邪魔だといわれてほっぽり出され、しかたなく町まで変装して出かけてきたのである。もちろんプレゼントに関することなのだが、今日中に用意してしまうとはわれながら甘いな、とか考えながら帰路についていたのだ。
が、ここが果たして自分が暮らしていた場所だろうか?レンガ造りの小屋が、朝から降り出した雪で白っぽくなっているのはまだいい。だが、小屋のサイズが前の二倍にはなっているのはなんだ?増築されたほうの屋根から生えているのは童話に出てきそうな口の大きい煙突だ。おまけに玄関においてあるのはトナカイの置物ではないか?隣に生えている木は目が痛くなるような原色でライトアップされているし、扉や窓は季節はずれのアイヴィーで装飾されていた。ドアノッカーの所に飾られているクリスマスリースに、なぜか悪い予感を感じながら、テスタメントはドアを開けた。
______予感的中。
思わずドアを閉めようとした体を、自ら鼓舞しながらテスタメントは異郷と化した我が家を見た。リビングに続くドアの上には、「MERRY CRISTMAS!!」と書かれた看板が取り付けてあり、その左右には羽を広げた天使たちが彫刻されていた。壁は緑と赤を基調とした飾りがつけられ、ところどころに小さな鐘やマツボックリ、さらにはサンタクロースの飾りが吊るされている。絶妙な飾り具合に、普通は驚くところだが、テスタメントにそんな余裕はなかった。さらなる異郷と化しているであろうリビングに、これから単身乗り込まなければならないのだ。全身全霊をかけてドアノブに手をかけ、一気に引く!!
突如流れ出したクリスマス・キャロルに驚きながら、部屋の中を見て、テスタメントは逃げ出すのを必死で踏みとどまった。リビングは一階のほとんどのスペースを使っており、目立たない位置に二階へ続く階段が見えた。そのそばにはあの煙突につながっているであろう、大きな暖炉が火の入っていない口を開けていた。それらを見るまでに、どこからかとってき、飾り付けされたもみの木を4本、信じられないほどクリスマス風に飾られた長テーブル___うえには教会においてありそうな銀の蝋燭立が数本立っていた___玄関で壁を飾っていた物より少し大きめの壁飾り、その合間を縫うようにして掛けられた垂れ幕、キリストのレリーフがついているパイプオルガン。とどめに暖炉につけられた無数のどでかい靴下を見なければならなかったが・・・・・。それらを見ているうちに、テスタメントは思った・・・。これはとんでもない悪戯なのではないかと_____
つづく
あとがき
まだまだつづきま〜す。ディズィ子がでない〜。