ギアのクリスマス1 
著:ランシェオン・カルバレーナ

科学が事実上消滅したこの世界にも、風習や伝統は残っていたりする。
その中でも、クリスマスは世界的な伝統行事といっても過言ではない。
また、一部の人間にとっては、12月25日というのは別の意味を持っている。すなわち、ディーズィーの誕生日である。そして、その一部の人間たちによって、壮大なクリスマス・パーティー兼誕生日パーティーが計画されていた。ある人物を除いて・・・・・。

12月25日AM6:26「悪魔の住む森」

その日の朝、テスタメントはとても居心地が悪かった。いつも道理朝食を用意し、サキュバスやエグゼビーストと共に席に着いて食事を始めた所であった。
「今日は何の日だったかしらね〜?エグゼちゃ〜ん?」
体中に刺青をし角を生やした少女、サキュバスが口を開いた。その手にはボイルしたソーセージが突き刺さったフォークが握られている。彼女の目は、これでもかというほど笑っていた。
「サア、ボクニハヨク分カラナイヨ。」
 少女の問いに答えたのは、「えぐぜ」と書かれたどでかいお椀にもられた食事を食べていたエグゼビーストであった。紫色の甲羅をまとった顔は、表情を浮かべることはできないはずだが、テスタメントには飛びっきりの笑顔を浮かべているように見えた。しかも滴るような悪意がこもっていた。
「ご主人様は知ってますか〜?」
知らない、と答えたかったが、彼らの痛いほどの視線がそれを許さない。彼はため息をついてから、ちらと卓上のカレンダーを見ながら答えた。そこには、色取り取りのペンで装飾された25という数字がある。
「・・・12月25日。キリストの生誕日だ。」
当たり障りのない答えをかえすが、一人と一匹には不満だったらしい相変わらずにこやかに笑いながら
「ほかには?」
と聞いてくる。それだけだが、とこたえたかったが今度は自分のなかの何かがそれを許さなかった。ため息もせずに答える。
「ディーズィーの誕生日だな。」
その言葉を待っていたらしい。俄然目を輝かせると、ゆっくりと喋り始めた。
「そうですよねぇ。明日はクリスマスでディーズィーちゃんの誕生日なんですよねぇ。
去年はいろいろあってお祝いできなかったし、今年はお祝いしたいですよねぇ。だから・・・」
 そこで言葉を切ると、彼女は満面の笑みを浮かべた。
「パーティーの準備をしましょ〜う!」
能天気そうにいう彼女に向か
って、テスタメントは静かに答えた。
「・・・・本人がどこにいるかもわからないのにか?」
あっと声をあげて、サキュバスは固まった。現在、ディーズィーはジェリーフィッシュ快族団に身を置いて各地を巡っている。手紙が来ることもあったが、最後に来たのは半年前だった。今から探して見つかるはずもない。サキュバスは精気を抜かれたように俯いた・・・妙に芝居くさいとテスタメントは思った。
「そうですよね・・・。でもせめて、本人がいなくてもパーティーはして上げましょう・・・。せっかくのクリスマスなんだし、そっちの方が彼女も喜ぶわ・・・。と、いうわけでパーティーの準備をしてもいいですか?」
むちゃくちゃな理屈だったが、特に反対する理由もなく、テスタメントは承諾した。
そのとき、テスタメントが水をとりにいったとき、サキュバスとエグゼは顔を見合わせてガッツポーズを決めた。
「そうそう、プレゼントも用意しておいてくださいね。あとで郵便で送りますから♪」
最後にそういうと、サキュバスは残りの朝食を平らげて、エグゼビーストと一緒に走り去っていった。飾りなり何なりを用意するのだろう。
食器を片付けながら、テスタメントは空を見上げた。ちらりほらりと雪が降ってきていた。
「・・・・積もるな・・・・。これは・・・。」
かくして、居心地の悪い朝食は終わった。






あとがき
しょぼくてすみません。何気に続きま〜す。
ディーズィー出てないや・・・・。